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2015-02-04 23:10    chloe sam
「ほら、アメリカの、なんて言ったかしら、排日移民法とかができたでしょ、……病院の人たちもそれでみんな憤慨しましたのよ。熊五郎ってご存知でしょう、熊五郎が賄いでアメリカ討つべしって演説して、……院代が言っておりましたわ。そういうのが米国や峻一にも波及するんです。米国が米国と戦争する、じゃあ笑い話にもなりませんわ。それに、子供雑誌にも日米未来戦なんて話ばかりでるんで、軍艦の玩具を買ってくれくれって困るわ」  徹吉は笑った。 「元気でいいじゃないか」 「でも内弁慶よ、ほんとに」と、父親と病院と自分自身以外のことを滅多に讃めたがらぬ妻は、にこりともせずに言った。「学校じゃ隅の方に小さくなってるのよ。ほんとにお前さまに似たのですわ。顔立ちは少しお父様似のところもありますけれど」  そうしてまた龍子は、養子である夫に対して遠慮会釈もなくその父親の礼讃をはじめた。震災で楡病院の本館はびくともしなかった。が、ほんの少し、或いはかなり、もっと有体にいうならば龍子自身もびっくりしたほどの亀裂が、壁やバルコニーや円柱に生じ、巧妙に隠蔽されていた木材の部分を覗かせてしまった。しかし尽きることのない基一郎の発明の才は、この瑕疵をやすやすと解決したのだ。すなわち基一郎は多くの紙縒を作らせ、コンクリートに浸して亀裂を埋めさせた。その上からコンクリートを塗り砥石をかけると、どこぞやの宮殿を髣髴させる楡病院の威容はたちどころに再現されたのであった。 「お父様はあたし達のために新しい家をお建てになったのよ。病院の向って左の横手に」  と、喜ばしげに得意気に、龍子はこのときはじめて打明けた。 「これはお前さまには黙っていろって言われていましたの。あたしが出る前に建築をはじめて……あたしはそんな無駄なことおやめなさってと何度も言いました。でもどんな家ができているか楽しみだわ」  それから龍子は、その年の総選挙に結局基一郎が出馬しなかったことに話を及ばせ、——震災のこともあって山形の前工作もうまく行かず、なによりひさの強硬な反対に彼は屈したのである——さぞ無念であったろう父親の心境をうべなうように口調を早めた。 「お母様のおっしゃることも一理はありますけど、出馬さえされていれば、もちろん当選したわ。憲政会なんかに負けやしませんでしたわ。そしてまた宮中に参内なさるんでしたのに……」  徹吉がややむっとして黙っていると、龍子は晴れ晴れとした顔でなおこう言った。 「お父様はお前さまの帰られるのを本当にお待ちになっていらっしゃるわ。新しい家を建てて、今ごろは前の煉瓦塀をまた新しく塗りかえさせていらっしゃるにちがいないわ」  その口調には、それだけの人物である楡基一郎からそのようにして迎えられるからには、徹吉はこれまで以上にしっかりしなければならぬこと、老いつつある父親を助けて楡脳病科病院を一層もりたてていかねばならぬという願望と要求とが、如実にまざまざとこめられているのであった。  ——新嘉坡、そして香港。  船足は決して早くはなかったが、むしろ遅々としてはかどらないように思えたが、それでも尚、刻一刻、たしかに日本へ、故国へ近づいて行っていることが徹吉には理解できた。客観的に、かつ生理的に、そしてまた心理的に。そう、シンガポールの支那人街の漢字の看板からして、すでに言おうようなく懐かしかった。「万応涼茶」「広安欧美貨店」「華英電影戯」、その中にまじって「日本理髪」「日本薬房」というような文字。電車の中で言葉が通じなくて困っていると、一人の馬来人が寄ってきて、片言の日本語で通訳してくれたこともあった。「ナニナニ?」「ヒトリ四銭、二銭オツリ」なによりも出港のとき、山高帽に黒の紋附、白足袋をはいて右手に扇子といったいでたちの老人が岸壁に見送りにきていた。徹吉がその姿を飽かず見つめていると、妻がせかせかと彼を呼びにきた。反対側の舷では乗客たちが争って銀貨を海中に投じている。扁平な小船に乗った男たちが、そのたびに海にとびこんで器用に貨幣を拾いあげる。 「ほら、銅貨だと見むきもしませんでしょ。すれっからしだわ。あんな連中にお金をほうることはないわ。本当にもったいない」  と、憤懣を露にして龍子は言った。