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ミュウミュウスタッズバッグ編集

 ついに出逢った。  戌《いぬ》ノ下刻。  歳三が金杉|稲荷《いなり》の鳥居の前を通って久保田某という旗本屋敷の角まできたとき、不意に背後から一刀をあびせられた。  あやうく塀ぎわへ飛んでくるりとふりむいたときは、すでに和泉守兼定を抜いて、癖のある下段にかまえている。 (………?)  歳三は、むっつりだまったままだ。月がある。その下で、相手の影は、しずかに左へ移動している。 (出来るな)  と思ったのは、相手がふたたび刀を納め、右手を垂れたまま、歳三のまわりを、足音もなく歩きはじめたからだ。その足、腰、居合の精妙な使い手らしい。  歳三は、眼をこらした。  夜目というのは、間違っても影を見据えるものではない。影のやや上を見すえれば、物影がありありと視野の縁《ふち》にうかぶ。夜闘の心得である。 「おい」  と、相手はいった。 「訊いておく。何藩の者か。ついでに名も名乗ってもらえば、供養はしてやる」 「べっ」  と、歳三は|つば《ヽヽ》を吐いた。それっきり歳三は沈黙している。  相手は、歳三の仕掛けを待つ様子であった。間合は、六尺しかない。双方いずれが一蹶《いつけつ》しても、いずれかが死骸になるだろう。  歳三も、仕掛けを待っている。  こちらが仕掛ければ、その|起り《ヽヽ》を撃つのが居合の手であった。
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