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「——勝手なことを!」 「そう言うな。悪い話ではないと思うのだがな」 「ぬかせ」 「強情にも、限度があるのではないか、段大牙。そもそも、体力がもう尽きかけているはずだ。それとも、このまま食事を摂《と》らずに自ら餓死するか。伝統ある〈奎〉の段家を、御身自らの手で絶やす気か」  死に対する恐怖や躊躇は一切ないが、これには考え込まざるを得なかった。父と兄・士羽《しう》が守ろうとした物を、彼があっさりと手離すわけにはいかないのだ。段家の血統を伝えること、そして〈奎〉を——ひいては〈魁《かい》〉を復興することが、ひとり残った大牙の使命なのだ。たとえ、大牙自身には別の考えがあったとしても、だ。 「さあ、如何《いかが》する」  情勢が変わったと見て、子明はかさにかかって責め立ててくる。 「何を迷う。勅書が発された以上、もう後戻りはできぬ。あとは死のみだが、これも御身には出来ぬはず。ここまでついて来た家臣どものことも、考えてやらねば」 「——時間を」  時をくれと、大牙は口に出しかけた。選択の余地はないにしても、決断までの時間が欲しかった。まず、淑夜に対する失望と怒りとを押さえねばならない。こんな事態に至ったのは、淑夜のせいだ。彼が、最初の手筈通りに事を進めていれば。いや、もしかして——。 (俺を、見捨てたのか) 〈衛〉の耿無影《こうむえい》と手を結んだ大牙に、身の危険を感じたのだろうか。ならば、何故はっきりとそう言わなかった。決して、強制はしなかった。別の機会を待つこともできたし、淑夜が望むなら穏便に去ることも許してやれたと思うのに。  苳児を連れていったのは、大牙に対しての脅迫に利用するつもりだったのだろうか。それほど信用がならなかったかと思うほどに、腹の底の方が熱くなってきた。  口を開こうとする前に、夏子明が待ち切れぬといった風に急き立てた。 「如何かな」  言われて、 「時間を」  と、応じかけた時だった。
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