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 タンダは、肌《はだ》が冷《つめ》たくなるような緊張《きんちょう》を感じていた。 「――なにが、どこから、やってきたんだね?」  アスラは眉間《みけん》にしわをよせて、兄の手をとった。そして、てのひらに文字《もじ》を書きはじめた。  チキサは、妹が指《ゆび》で書いている文字を読みとって、ぽつぽつと声にした。 「南からきた。だけど、なにって、わからない。ただ、聖《せい》なるものの……。」  タンダはうなった。 「それは、泳《およ》いできたっていったね。南からここへきて……いまも、ここにいるのかい?」  チキサは、妹の答《こた》えをまった。アスラは兄のてのひらに文字《もじ》を書くと、すぐに、手をひらひらとうごかした。 「南からきて、泳《およ》いでいった。あっちのほうへ……。」  アスラがゆびさしている方角《ほうがく》に目をむけて、タンダは、はっとした。  アスラの指《ゆび》は、まっすぐに北――青霧山脈《あおぎりさんみゃく》と、カンバル王国《おうこく》があるほうをさしていたのだ。 (あの、みょうにあたたかいナユグの河《かわ》がながれていったさきと、一致《いっち》している。)  その話をしようと、タンダが口をひらきかけたとき、玄関《げんかん》の戸をたたく音がきこえてきた。タンダは、眉《まゆ》をひそめて立ちあがった。 「きょうはお客《きゃく》さんの多い日だな。」  土間《どま》におりて、引《ひ》き戸《ど》をあけると、闇《やみ》のなかに、旅灯《りょとう》をさげた男の姿《すがた》がうかびあがった。 「兄貴《あにき》……。」  長兄《ちょうけい》のノシルは、旅灯の火をふきけして戸のわきにおいてから、タンダにむきなおった。  あおざめた顔をしている。
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